四 葉

 

Exhibition : SAN - Sentier Arte e Natura
2011.07.19 - 10.15
Queyras, Alps, France
Val Varaita, Piemonte, Italy

Organized by : Association Grandeur Nature
Supported by : Office de Tourisme du Queyras (FR)
Ufficio turistico di Frassino (IT)

Special thanks :
Acanthernel (FR) / Grongios Martre (IT) /
Refuge Bagnour
(IT) / Refuge Alevé (IT)

広島・長崎の歴史的惨事から、原子力の悲劇を学んできた一個の日本人として、2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島での原子力発電所事故は衝撃的な出来事でした。

災害の悲惨は勿論のこと、私が痛みを感じるのは、どのように日本社会が(或いはその社会の持つ「未来像」が)、一見無意味に思える感覚を切り捨てながら、少しづつしかし確実に、快適に効率的に、偏った方向へと発展していたのかを目撃することでした。いつの間にか日本社会は、日本企業を国際原子力産業競争に参加させることを積極的に許していました。

非常な痛みを伴うこの出来事はまた、私にとって「幸福」を考させるきっかけともなりました。それは消費者主義的な、つまり消費者に満足を提供する為のパッケージ的なものではなく、非効率でおそらくは不便で、計測不可能であり販売不可能である、どのように言葉を並べて概念を示したとしても、次の瞬間には表面的に意味が剥ぎ取られ、必ず販売可能な「商品」へと転化・目的化される消費者主義的文脈の下では、全く「無意味」としか言いようの無い感覚です。

「四葉のクローバー」は「幸運」の象徴であると云われています。私は今回、この四つ葉のクローバー型の作品を、アルプスの山中、イタリアとフランスの国境にあるSentier山道の途中にいくつか設置します。多くの美術作品が通常「展示」することを目的として制作されるのに対して、この作品は山道のどこかに「隠す」ことを目的としています。

計画上、この作品は単体の美術作品として鑑賞されることを期待していません。本作にとっては「探す」という過程が重要であり、同様に「探し出した」という結果自体にもあまり意味はありません。自然環境において私の作品は、人々の自らの発見を促す為の単なる媒体です。そして一見無意味とも思える、もっとも創造的で生産的で、消費者主義的には最も非生産な時間に楽しみを見つける、ひとつの手段として今回この作品を提案しています。

今回これらの理由から、展覧会上必要最低限の情報以外には作品を設置した場所は勿論、設置した作品の数も公表しません。作品を見つけるのは観客自身であり、作品よりも重要な何かを発見するのは彼ら自身であると期待しています。それは例えば広い草原で、延々と四葉のクローバーを探すような、まるで意味の無い「幸福」の感覚に似ています。