Log de Voyage明日

 

 

「明日」というのは韓国語で「내일(ネイル)」という。

「日本」という漢字は韓国語で「일본(イルボン)」と発音するから、「일(イル)」という音は「日」、「본(ボン)」という音は「本」という漢字に対応しているのだろう。ふむ。「ネイル」の「イル」は「日」、じゃぁ「ネ」は?

ソウル中区の明洞(명동)は「ミョンドン」と発音するから、漢字で「明日」と書いたら韓国語では「ミョンイル」になる。つまり「ネイル」は「明日」じゃない。

◇ ◆ ◇ ◆

漢字は個々に個別のイマジネーションを内包している。
台湾の大学に作品制作のために滞在していた時、最寄りの地下鉄駅と大学の構内を巡回しているバスがあった。バスの後方には張り紙がしてあって、大きな文字でこう書いてある。

「撃破器」

「Attack / Destroy / Tool??」オーマイガッシュ!とてもレヴェルの高い武器?私はものすごいものを想像したね。

ところがよく見てみると、張り紙の上には緊急時に窓ガラスを「撃破」するための小さなハンマー。なるほど、字面から想起されるイマジネーションの風景は、知識によってまるで異なる。

台湾では駅のプラットフォームのことを「月台(ユェタイ)」と呼ぶ。「入場券」は「月台票(ユェタイピャオ)」。私の頭に浮かぶのは、どう考えたって「ムーン・ステージ」。

「じゃぁ今日はムーン・ステージで待ち合わせする?」

なんてロマンチックな字面だろう。一体何がどうなって、このような漢字が当てられたのか実に不思議なものなのですが、そうしてエキゾチックな漢字の構成に愉快な想像力を遊ばせていると、そういえば日本語だって、相当に奇妙なものだと思う。

Platformプラットフォーム」のことを、正確な日本語で何というのか知らないけれど、一般的にはこれを「ホーム」と呼ぶね。

東京にフランス人を招待した際に——私は仕事の都合で同行できなかったのですが——私の友人とフランス人とが待ち合わせをした。英語が怪しい私の日本人の友人は、この「ムーン・ステージ」を最も間違いの少ない待ち合わせ場所であると考えた。

待ち合わせの駅のプラットフォームに到着したフランス人は、日本の友人に電話をかける。

「Hello, I am here, where are you?」
(着いたけど、どこにいる?)

新宿の駅のホームには大勢の日本人。待ち合わせの場所であるとはいえ、なかなか彼を発見できない。電話に出た私の日本の友人は

「Yes, yes, me too! I am in ホーム! I'm waiting you at ホーム!」
(うん、僕も着いてる、ホームにいるよ、ホーム、ホーム!)

フランス人は驚いたね。日本人は時間に正確だと聞いていたのに、まだ家(ホーム)にいるなんて!それとも何かとてつもない間違いが重なって、待ち合わせの場所は家だった?

そうこうしている間に彼女は、駅のプラットフォームで「I am in home!」と電話口に繰り返している日本人を発見することとなるのです。

◇ ◆ ◇ ◆

さて、このフランスの友人の来日の経験は、とてもユニークで印象深いものとなったそうですが、そういえば韓国語でいう「明日」、「ネイル(내일)」の「ネ」は、漢字で書けば「來」、すなわち「내일(ネイル)」は日本語漢字でつづるところの「来日」なのだということです。

 

Illustration for Log de Voyage

Illustration by Kaori Mitsushima

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