Log de Voyage序文:断絶の世界

 

 

世界はあらゆるところで断絶している。ある地域では間違いなく当然だと信じられていることも、ある別の地域ではまるで異なる現象として解釈される。あらゆる世界は千々に裂け、しかし互いに干渉し、激しく複雑な化学反応を引き起こしている。人間も。そして人間の内部も。
個々にとってはまごうことなく、抗うことなど到底できない、己の「自然」の法則に従って、反応し、結果また次の反応を引き起こす。世界は広い。己の眼で目撃する世界、己の自然に従って、ジグザグに歩くこの人生という世界。それはとてつもなく広く、深く、恋と永遠の謎の魅力に満ち溢れている。

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サイトスペシフィック・アートという現代美術を学び、二〇〇四年年以来、アジアから中東、ヨーロッパを中心に、この領域での作品制作の実験的実践を試みている間に、私の興味の中心は、地理的な意味での「サイト」から、その土地で営まれている生活へと、そして生活を牽引けんいんしている文化そのものへと変わってきました。

日常的に非日常の中に身を置いて、継続的に、安定して不安定な生活を送りながら私が覚えたきた楽しみのひとつは、そこにある「意味するもの」と「意味されたもの」との「齟齬そご」の観察なのであります。
異邦人の何気ないゼスチャーが、ある時は奇妙に湾曲されて他者へと伝わり、またある時は思いもよらない愉快な光景を描き出す。他者の何気ない行為が私には別の意味を運び込み、またその意味したことが、無知な私をすり抜けてゆく。

ああ、この素晴らしき断絶の世界!
通じないことが大前提の、如何ともし難いもどかしさ。それでもどうにか求め合い、あるいはすっかり理解したような顔で素っ気ない。この「間違い」だらけの風景こそが、今日私が目撃する、世界の様相なのであります。

 

Illustration for Log de Voyage

Illustration by Kaori Mitsushima

 

 

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石井 潤一郎 / Jun'ichiro ISHII

1975年福岡生まれ。美術作家。2004年より、アジアから中東、ヨーロッパを中心に、20カ国以上で作品を制作・発表。
国際展「10th International ISTANBUL BIENNIAL : Nightcomers(トルコ '07)」「4th / 5th TashkentAle(ウズベキスタン '08 / '10)」「2nd Moscow Biennale for Young Art(ロシア '10)」「ARTISTERIUM IV / VI(グルジア '11 / '13)」参加他、個展、グループ展多数。パリ在住。
junichiroishii.com

 

 

 

 

 

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