Behind the Doors

 

スロバキア第二の都市、コシツェの町は整然としています。

町は整然と、しかし厳格に「中」と「外」とが区別されており、整然としているが、私的空間と公共空間の境界が強固である、あるいはそれらが完全に隔てられている、私はそんな印象を受けました。

それは、何か人々の生活の気配が、最低限の形でしか外には流れ出しておらず、中に入ってみるまではその想像が難しい、つまり外から中を窺い知ることが困難で、むしろ外と中との印象が極端に違う、というものした。

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あるチェコ人によると、共産主義時代、チェコ・スロバキアの公共空間は、決して「公共」のものではありませんでした。公共空間とはそもそも、教会の前の広場など、人々が社会的、政治的、様々な話題を自由に議論し、交換し共有する場所でした。しかし、共産主義時代のチェコ・スロバキアで「公共空間」はむしろ、警察、スパイなどによって、互いを監視し合うような場所として機能していたと云います。またその為、自由な公共の議論は扉の向こう、閉ざされた「中」の空間で行われていた、と云います。

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本作「Behind the doors」は、12枚のドアで構成された長方形の構造物です。いくつかのドアには覗き穴があり、内部の異なるコンテンツを覗き見ることができます。これらは私がチェコとスロバキアに生活した際に、印象に残った話をモチーフとしたもので、例えばひとつの覗き穴の中では、鍵が振子のように揺れています。1989年、チェコ・スロバキアで『静かな革命(ビロード革命)』が起こり共産主義体制が崩壊すると、人々は「鍵」を振ってその自由を祝福したと云います。

 

>> Interview @ K.A.I.R