回 廊

 

xhibition : JARDINS DE VOYAGEURS
2015.06.13 - 10.18
Arc-et-Senans, Franche-Comté, France

Supported by :
Saline royale
ACCR - The Association of Cultural Encounter Centres

技術的な革新によって今日、私たちの社会・文化へのアクセスは、以前に比べて非常に容易になりました。異なる文化・社会の情報が、現実とほぼ同時にネットワーク上を飛び交い、身体的にも遠く離れた場所へ移動し、異なる文化を観察、体験することが、広く可能となりました。

サイトスペシフィック・アートの活動を通して、自身の身体感覚を伴って発見する世界地域の文化的社会は、土地の文脈、つまり伝統・風土に基づいた固有の哲学、歴史的出来事の積み重ねにより、事物を様々な形に自動翻訳する、集合的な翻訳装置であるようにも感じられます。

出来事が奇異に解釈されてゆく自動翻訳装置の中で、私の考える解釈とは異なる現実と向かい合う度に、私は必要に応じて、自分自身の認識の方法を再構成しなければならないようにも感じられます。様々に異なる、そこで交換されている言語にさえ理解の及ばない、異文化の毎日に適応する為には、自身の文化背景から来る自然な発想さえ疑う柔軟性が必要かもしれません。

「自分自身を環境に適応させてゆく」それは今日のアーティストの姿勢としては脆弱で、受動的に過ぎるかもしれません。しかし、そのように抗いようのないものを前にしてのみ、そのようなものの前で精一杯振る舞うことによってのみ、私は、自身の創作を感じることが出来るようにも感じます。

奇異な現実を理解すること。私はそれまでの知識を寄せ集めて、目の前の不可思議な現実を、自身で理解できるような「枠」に当てはめて、あるいは新しい「チャンネル」を設けながら、どうにか納得出来るような形に咀嚼してゆきます。そしてこの過程には、他者とは決して共有できない、しかし同時に普遍的であるかもしれない、孤独な納得のようなものが存在しています。

作品「RONDO」は、円形の廊下を中心とした木造の作品です。作品の内部に進むと、天井は次第に下降し、上下方向に空間が狭まってきます。

簡単に入って行けるのは入口付近、後は迫って来る天井の梁で頭を打たないよう、あるいは打つことも構わず、つまり自身の身体と相談しながら、目の前にただ単調に続く通路を、更に奥へ進むのか、あるいはもはや引き返すのか。。。そうして奇妙に孤独な体験の内に、私が終に発見するのは、どうやら自分自身の姿でもあります。